概要と最新の研究課題
畜産業及び食品産業の振興と国民食生活の安定に寄与することを目的とし、食肉の生産、処理、加工等に関して専門委員会の審議を経て、理事会において、課題、研究者、事業費等を決定し、研究調査を実施します。
令和6年度研究課題
研究課題 | プロジェクト研究メンバー |
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①食肉生産における温室効果ガス排出抑制技術の開発と検証 | (1)農研機構畜産研究部門 (2)栃木県畜産酪農研究センター (3)前田牧場株式会社 (4)山梨県畜産酪農技術センター (5)株式会社サイボクファーム (6)公益財団法人伊藤記念財団 |
②[牛伝染性リンパ腫の清浄化に向けた研究開発」ー発症早期診断法の開発とその実践ー | (1)国立大学法人北海道大学大学院 (2)国立感染症研究所 (3)株式会社ファスマック (4)公益財団法人伊藤記念財団 |
③「牛伝染性リンパ腫の清浄化に向けた研究開発」ーワクチン開発に必要な知見の集積ー | (1)国立大学法人東京大学大学院 (2)地方独立行政法人北海道総合研究機構 (3)公益財団法人伊藤記念財団 |
④「牛のと畜・解体処理の自動化・効率化に関する研究開発」ー背割りロボットの開発ー | (1)食肉生産技術研究組合 (2)マトヤ技研工業株式会社 (3)公益財団法人伊藤記念財団 |
令和5年度研究課題 概要
①食肉生産における温室効果ガス排出抑制技術の開発と検証
1 研究背景
温暖化による地球規模の環境の変化は、気象災害の増加・激化等により人々の生活に被害を与えるとともに、生態系に深刻な影響を及ぼしている。特に自然環境との関わりが深い農林水産省にとっては、温暖化は極めて重大な影響をもたらす要因となる。2020年10月には、当時の総理大臣が2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出を実質ゼロとする目標を明言し、2030年度中間目標として2013年度比46%削減の達成に向けて取り組みが指示されたところである。
2 研究目的
畜産経営に由来する温室効果ガス(GHG)のうち、家畜排せつ物処理過程で発生する一酸化窒素(N₂O)は、メタンの約10倍の温室効果を有することから、その削減は、牛の消化過程で発生するメタン産生量の低減とともに、畜産経営の持続的発展のために解決すべき喫緊の課題である。
本プロジェクトでは食肉用家畜からの排せつ物処理過程で発生するN₂Oを削減しながら、高品質食肉生産を可能にする飼養技術の開発をめざす。
3 プロジェクト研究メンバー
(1)農研機構畜産研究部門
(2)栃木県畜産酪農研究センター
(3)前田牧場株式会社
(4)山梨県酪農技術センター
(5)株式会社サイボクファーム
(6)公益財団法人伊藤記念財団
4 研究開始年度
2022年度(令和4年度)~
②「牛伝染性リンパ腫の清浄化に向けた研究開発」ー発症早期診断法の開発とその実践ー
1 研究背景
牛伝染性リンパ腫は、全国的に増加が続き、発生届出数は令和2年に4,197頭で牛の監視伝染病中最多となっている。発症率は低いが発症すると飼養農家の経営に大きな影響を及ぼすため、「日常の管理による感染拡大防止と感染牛の計画的な更新により清浄化をめざす」とされており、発症リスクを把握して行う早期摘発淘汰は重要である。しかし、本病の発症機序は解明されておらず発症を予測できる診断法は存在しない。
2 研究目的
牛伝染性リンパ腫の主な原因は、レトロウイルス科に属する牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)である。本病の発症機序としてBLVによる宿主遺伝子の挿入部位が予後を規定している可能性があることから、この発症機序を検証することにより早期診断法の実現をめざす。
3 プロジェクト研究メンバー
(1)国立大学法人北海道大学大学院
(2)国立感染症研究所
(3)株式会社ファスマック
(4)公益財団法人伊藤記念財団
4 研究開始年度
2022年度(令和4年度)~
本プロジェクトから牛のリンパ腫発症を予測するがん検診技術を開発しました。詳しくはこちら。
③「牛伝染性リンパ腫の清浄化に向けた研究開発」 ーワクチン開発に必要な知見の集積ー
1 研究背景
牛伝染性リンパ腫は、全国的に増加が続き、発生届出数は令和2年に4,197頭で牛の監視伝染病中最多となっている。発症率は低いが発症すると飼養農家の経営に大きな影響を及ぼすため、「日常の管理による感染拡大防止と感染牛の計画的な更新により清浄化をめざす」とされており、発症リスクを把握して行う早期摘発淘汰は重要である。しかし、本病の発症機序は解明されておらず、ワクチンも発症を予測できる診断法も存在しない。
2 研究目的
牛伝染性リンパ腫の主な原因は、レトロウイルス科に属する牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)であり、ワクチン開発のための多くの研究が行われてきたが、有効性の評価が極めて難しいこと等から未だ実用化には至っていない。治療法がなくワクチンを望む飼養農家の声が根強いため、新たな可能性のあるワクチン株を中心としたワクチン開発に必要な知見の集積を行う。
3 プロジェクト研究メンバー
(1)国立大学法人東京大学大学院
(2)地方独立行政法人北海道総合研究機構
(3)公益財団法人伊藤記念財団
4 研究開始年度
2022年度(令和4年度)~
④「牛のと畜・解体処理の自動化・効率化に関する研究開発」ー背割りロボットの開発ー
1 研究背景
食肉処理施設におけると畜・解体処理については、従業員の高齢化に加え、刃物使用による危険な作業であるうえに、騒音等の厳しい労働環境等により、従業員の確保が次第に困難となっている。
特に、牛の背割りについては、熟練した技術を要するため、自動化を目指し大型研究プロジェクト事業として令和4年度まで研究開発をすすめてきたところである。
これまでに背割り作業の動作確認とデータ化、画像解析やAIによる尾椎検出技術はある程度の成果を上げたが、背割りロボットの完成のためには「と体のねじれ」を防止する技術の開発が必要になった。
2 研究目的
自動背割り作業の際に生じる「と体のねじれ」の防止対策を検討し、実働試験を重ねながら背割りロボットのプロトタイプの完成を目指す。
3 プロジェクト研究メンバー
(1)食肉生産技術研究組合
(2)マトヤ技研工業株式会社
(3)公益財団法人伊藤記念財団
4 研究開始年度
2023年度(令和5年度)~
※研究課題「と畜解体処理(特に牛の背割り)の自動化・効率化に関する研究開発」については令和4年度で終了いたしました。
※研究課題「食肉の健康寿命及びその関連要因に与える影響」については令和2年度で終了いたしました。
PHYSIOLOGICAL REPORTSに掲載されました>